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店主のひとりごと



何だと思われますか?というか「何だ?」と考えられた方おられるんでしょうか?
その意味をわかった上で、その重みを知った上で看板を掲げてるパン屋さんが何店あるのでしょうか?世の中新しく出来るパン屋はこぞって「ブーランジュリー」。
なんで?“Boulangerie”じゃないのに、なぜですか?

元々パンは“神の仕事”。ご存知の方おられるでしょうが、語源は「boule(球)を作る人」です。その「boule」は何を意味し、何の象徴だと思いますか?惑星であり、地球です。小麦から粉を作り、「命の源」である地球を形どった「boule」を作るんですよ。後に神の仕事から、神に仕える者の仕事になり、焼きあがるまで、釜の中に入っているパンに祈りを捧げているといわれています。わかるでしょうか?「パン屋」を訳したら「ブーランジュリー」じゃないんです。

悲しいことに、多くの「ブーランジュリー」を冠しているパン屋さんたちが、こんな事を知らずにつけています。安易すぎではないかと僕は思います。「ブーランジュリー」は“フランス”の文化です。フランスの何をご存知なんでしょう?フランスに何の思いを抱いているんでしょう?そしてフランスの何を感じ、フランスの何を伝えようとしていらっしゃるのでしょうか?

フランスの食文化を担う「Pain」と、日本独自の文化である「菓子パン」の異文化が平然と並んでいるという事に、作り手が何の疑問も違和感も感じていない…。レストランで和食とフレンチが平然とメニューに載っている店に、不信感は抱きませんか?料理人はひとまとめに「料理です」と言いますか?ありえないでしょう。それがありえてしまうのが、残念ながら、この業界の意識レベルの低さかと僕は感じます。

フランスではパンは「Pain」と綴り、食事とともに食すもののみを指します。クロワッサンやブリオッシュは「ヴィエノワズリー」とされます。僕の働いたパリの店では、パンにはパンの、ヴィエノワズリーにはヴィエノワズリーのシェフがいて、それぞれがそれぞれの仕事を終えれば帰ります。日本ではバゲットもクロワッサンも、アンパンも、クリームパンも、メロンパンも、惣菜パンも、デニッシュも、総して「パン」ですよね?でもね、それは「Pan」であって、「Pain」とは違うんですよ。別にそういうお店を否定するつもりはありません。そういうお店が日本ではほとんどですから。

でもね、なら“Boulangerie”と なぜ掲げるのでしょうか?なぜこんなに、“Boulangerie”が乱立しているんでしょうか?その中に“Boulangerie”は一体何件あるとお考えでしょうか?僕は皆無だと思います。ものまね上手な日本人の長所であり、短所。何でもそこそこ出来てしまう。もっと深く掘り下げる事を怠ってしまう。

“Boulangerie”を掲げるなら、せめてフランスを愛してください。歴史を知って下さい。フランスの精神性に触れてください。菓子パンが並んでたっていいじゃないですか。そんな職人の作ったバゲット一本で、パリに想いをはせることだって出来るんです。

いっかいのパン職人である僕が何か出来るなんて、そんな大それた事思いません。ただね、僕が受け継いだのは「ルセット(=レシピ)」では無く「エスプリ(=こころ・精神)」です。フランスの食文化の一端を担う、決意表明として“Boulangerie”の看板を掲げ続けるでしょう。

異国の民である僕が、異国の文化をお借りしているという感謝と、誇りと共に・・・。



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